2012年3月12日月曜日

将棋の戦法の一つである『棒銀』について教えてください。

将棋の戦法の一つである『棒銀』について教えてください。

『棒銀』についての質問が3つあります。



1、現在、プロアマ問わず『棒銀』は数多く指されているのでしょうか?



2、今年の順位戦などの棋譜を見ても、棒銀はほとんど指されていないようですが、なぜなのでしょうか?



3、また、加藤一二三九段が棒銀は『優れた戦法』と述べている理由はなぜなのでしょうか?





どうぞ、よろしくお願いいたします。(ちなみに私は加藤先生の本を読んで将棋を覚えました^^;)


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1、棒銀はアマなら初心者に根強い人気がある戦法です。高段者になればなるほど減っていく傾向にあります。なにより棒銀は初心者ッぽいという偏見を持っている人が多いです。プロの棒銀はアマの棒銀とは違って棒銀を見せて相手の駒組をけん制したり棒銀をちらつかせて飛車を振るという高等戦術を展開しています。また一手損角換わりという戦法相手に有力な作戦として注目されています。



(一手損角換わりというのは後手番なのにさらに一手損をして角を交換するという普通に考えたらおかしな戦法です。しかし相手より駒組が遅れるので戦場から玉が遠く玉にこちらの方がいい場合もあります。また将棋にも形によって相性が有ります。これによって相手の形をみてからこちらは有効な形に決めるという「後だしじゃんけん」が可能になるのです。先手は玉の囲いの遅れ、戦闘態勢作りの遅れをとがめられるかどうかが勝負になります。)



2、棒銀がほとんど指されていない理由は、棒銀は将棋の攻めの基本である「数」の原理に非常に忠実な戦法です。



数の原理とは相手の守り駒より自分の攻め駒の方が多くなければ攻めは成功しない、ということです。



棒銀は飛車と銀と歩を使い突破してしまおうという非常に単純かつ破壊力のある戦法なので、対策し尽くされています。



よって数の原理に忠実な棒銀を受けれない事は戦法として成立しないことを意味します。



以上の理由で棒銀は対処策が多いため最初から狙うことはあまりありません。相手の出方を見て棒銀にするということになりますが、やはり対処策が多く一手損角換わり意外にはあまり見られなくなってしまいました。今期順位戦に棒銀は出ていませんが竜王戦に棒銀が出ているので参考にしてみてください。



3、一度良いと思った戦法は指し続ける加藤先生ですから棒銀も非常にいい戦法だと思っておられるのでしょう。好きな駒は銀と仰っていますし。銀は営業部長だそうです(笑)。



直接の理由はよくわかりませんが棒銀に何か強いこだわりでもあるようです。



個性的な加藤先生、大好きです(笑)。



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1、プロではそれほど多い方ではないと思いますが、一手損角換わりの流行により一時期よりは指す人は増えているはずです。アマチュアでは初心者から上級者まで、幅広く人気がある戦法だと思います(自分も棒銀大好き人間です)。





2、棒銀が現れる可能性がある戦型は、主に①矢倉②角換わり③相掛かり④対振り飛車の4つです。一つずつ検証してみましょう。

①矢倉の棒銀は現在はあまり見ることができません。これは、飛車先保留が主流になったことにより、銀よりも桂の活用を重視した戦型が増えたためです(4六銀・3七桂型やスズメ刺し等)。

②一手損角換わりへの対抗策として先手の棒銀が今注目を集めています。

③引き飛車での先手棒銀という戦法はあります。しかし、現在は先手で相掛かりを目指す人も少なければ後手で相掛かりを受けて立つ人も少ない(一手損や横歩取りを選ぶ)というのが実情です。

④現在は居飛車穴熊をはじめとする持久戦が主流なので、指す人はほとんどいません。



これに加え、そもそも棒銀という形にならない戦型もあります(横歩取りや角交換型の振り飛車)。こうして総合的に見ていけば、棒銀を見る機会はごく限られている、と言えますね。





3、これは加藤九段ご本人の言葉をお借りするのが一番でしょう。

(以下「一二三の玉手箱」【毎日コミュニケーションズ】から引用)

「棒銀はすごく緊張感があるし、うまくいけば楽勝、快勝です。(中略)どうやら私は銀が好きなようです。(中略)鋭角的な働きで、たとえるなら会社の営業部長といったところでしょうか。どんどん開拓していって、業績を拡大していく感じの働きをします。」


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棒銀にもいろいろあります。加藤先生の棒銀ということは、対四間飛車の急戦棒銀のことでしょうか



あまり指されない最大の理由は、角道を止める四間飛車自体があまり指されないからだと思います。



四間飛車に対する棒銀は渡辺竜王もアマチュアに対して推奨しているので有力なのは間違いないです。曰く「アマの四間飛車は居飛車穴熊を意識するあまり駒組みがぎこちなくなりがち。そんな相手にはどんどん急戦を仕掛けて欲しい」



対四間飛車棒銀の長所は、相手がどんな待ち方をしてもだいたい成立するところでしょうか。



私の記憶にあるのは2年くらい前(もっと前?)のNHK杯▲森内△堀口戦です。堀口七段の四間飛車に森内九段が棒銀で圧勝しました。



相居飛車系の棒銀もプロが指しますよ。相掛かり、一手損角換わりでは棒銀がポピュラーで有力です。



去年のA級順位戦で三浦八段がノーマル角換わり先手棒銀で勝ったというのがありました。



深浦九段が今年、矢倉先手棒銀を使って勝ったのもありました。


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1.アマは初心者ほどよく棒銀を使ってますね。

プロでも、使われてますが、初心者の棒銀とは、全然違う物です。



2.ほとんど指されていないということは無いと思います。

平成23年度将棋年鑑でも角代わり棒銀として掲載されている棋譜は14あります。

全体から見れば少ないですが、相掛かりの戦型がほとんど指されて無いですし、矢倉棒銀は最近は、主力戦型ではないので、そう考えると多い方だと思います。



3.加藤一二三先生に直接聞いた訳ではないので、あくまで推測です。

・簡単で覚えやすい。

・相掛かり、角代わり、矢倉、対振り飛車とほぼすべての戦型で使え、かつ有力な作戦である。

・加藤一二三先生の好みに合うから(笑)

加藤一二三先生は「銀」が好き!(笑)

といったことが主な理由だと思います。


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1. 対振り飛車での採用率減が大きく、棒銀の出現率は減少しています。ただし、一手損角換りに対しての先手棒銀は増えています。



2. 角道を止めない振り飛車の流行により、角頭攻めを狙う棒銀は使いづらくなっています。(ゴキゲン中飛車に対して角頭攻めを狙う場合は、中央に厚い4六銀型のほうが好まれています)



3. 想像ですが、歩越しの▲4六銀型は△4五歩の反撃を受けやすいのに対して、棒銀は安定して▲3五歩の仕掛けを得やすいといったあたりではないでしょうか?



【追記】 蛇足かもしれませんが、2.の補足です。

角道を止めない振り飛車に対して棒銀を選択しづらいのは、手数をかけて飛車先に棒銀を繰り出しても角交換されてしまうとターゲットを失ってしまうからです。

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